どこかの繁華街。
中野だろうか、いや、新宿だろうか。
都心の雰囲気のある街にたたずむこじんまりとしたマンション。
その比較的低層階に妻と二人で住んでいる男。
男は芸能人なのだろうか。
部屋で妻と二人でいる。
妻が「たばこを買ってくる」と言って外に出ていこうとした。
妻はタバコを吸わないのにおかしい。
即座に浮気をしているのだと男は思った。
そのことを問い詰めると、あからさまに妻はうろたえた。
そして、「タバコは気分が悪くなった際に、気付け薬の代わりに吸うのだ」と言い訳をした。
そう言い残して妻はタバコを買いに行ってしまった。
明らかに苦しい言い訳だ。
季節は冬。
こっそりと妻の部屋に行くと、ファンヒーターがつけっぱなしだった。
タバコを買いに行った後に、また部屋に戻ってくるのだろうか。
部屋に浮気の証拠を探すが見当たらなかった。
男は妻と別れる決心をした。
いや、もっと大きな決心だ。
世捨て人になるのだ。
男は妻がいなければ何もできないからだ。
部屋の窓から外を覗くと、外国人の家族が繁華街を歩いていた。
イスラム系の外国人で、夫婦と、その子供たちが数人。
その子供の一人は虐待されているように見えた。
マンションの部屋を出て、階段で下まで降りて、その子供の元に駆け寄る。
寒い冬なのに、ここで野宿をするという。
家族が嫌いなようだ。
部屋から持ってきた毛布で、一緒に寝ようと子供に言うと、子供はうれしそうに笑った。
男は自分と子供をだぶらせて、悲しい気持ちになった。
子供が寝たのを確かめると、毛布を子供にかけたまま繁華街を歩く。
繁華街を歩いて、志村けんを探す。
もう、男は志村けんの元に行くしかないのだ。
志村けんは、きっとカラオケをしているはずだ。
カラオケボックスに行って、部屋をのぞくが志村けんはいない。
客に聞いてみるが、ここにはいないという。
このカラオケ屋は巨大で、建物の全てのフロアがカラオケボックスになっていた。
カラオケ屋ビルのエレベータに乗って、各フロアで志村けんを探した。
しかし、そのエレベーターは壊れているのか、客のことも考えずに猛スピードで急上昇しては急下降する。
そして、大きな音を立てて、急に止まる。
乗ってる客はみな天井や壁に打ち付けられる。
とんでもないエレベーターに乗ってしまった。
本当にここに志村けんはいるのだろうか。
すると、一緒にエレベータに乗り合わせた客が「東村山のカラオケボックスにいるんじゃないか」と言った。
別の客が「きっとあの人は、そこで永遠に歌っているはずだ」と笑った。
よし、それなら東村山に行こう。
そう思ったが、エレベーターはいっこうに止まらない。
延々と急上昇すると思ったら、今度は最上階でガシャンという爆音とともに停止した。
停止したかと思ったら、今度は真横に動き出した。
鉄道と連動しているみたいで、そのままエレベーターは東村山に向かった。
鉄橋を渡る。
本当に目的地に着くのだろうかと不安になる。
出川? いや、ダチョウ倶楽部の上島竜兵の顔が浮かんだ。
男は上島竜兵なのだろうか。