その見た目は宇治の平等院のように見えた。
それは迎賓館と呼ばれていた。
その建物が、ぼくの実家の近くの空き地にあった。
今はそこにアパートが建っている。
道を挟んで民家があるが、その一帯に昔は迎賓館が存在した
もちろん今は跡形もなく無くなっている。
地図にも史跡址地などと書かれてはいない場所だ。
昔、迎賓館の一部が壊されたことがあった。
ちょうど30年ほど前までは牧草地になっていた部分、今はアパートがある場所だけ壊されたことがあったのだ。
かつてそこで色んな事、人間のドラマがあった。
だからその土地の前に立つと妙な感じがする。
その色んな事があったという古い記憶が自分の中のどこかに隠されているのである。
迎賓館を別のものに建て替える。
それは運命であった。
建て替えると自動的に別の存在(建物)に置き換わるという(運命の)設定が成されていたのである。
すると甥っ子と姪っ子が現れた。
甥っ子が、僕に学校の勉強のことを質問してきた。
昔のことが書かれた本、古文だろうか?
本を手に質問をしてきた。
しかし、そのことはもう教えられない。
いや、僕はもっと違うことを教えた方が良いのだ。
それは、人間の本来の姿である。
人間にとって何が本当は大切なのかということを教えるのだ。
しかし、なかなか分かってくれない
すると、クライアントのT氏が現れた。
甥っ子と同じようになかなかわかってくれない。
T氏は、僕が古代の何かを調べ解き聞かすこと、それはもはや不要だと思っていた。
それは人にとって大切なことであるだが。