中学校からの友達のYの家にいる。
Yは親が教師をやっており、そのため教員住宅に住んでいた。
教員住宅は団地のようなつくりで、築年数はかなり古い。
実際のYはH市に住んでいるはずだが、当時のまま、教員住宅の最上階の5階に住んでいた。
僕はYと、その弟のHと一緒に教員住宅の5階にあるYの家で遊んでいた。
Hは当時のまま小学生だが、Yは大人になっていた。
「まだここに住んでいるのか?」
とYに聞くと、「そうだ」と言った。
でも、どこかおかしい。
この建物は妙な感じがする。
手に持っていたボールを床に置くと、コロコロと転がった。
「この建物、傾いてるぞ」
と言うと、Yはそれを分かっているようだった。
危険だと思ったのでYの家の畳をめくってみると、なんと、鉄筋コンクリートに大きなひびが入っていた。
その箇所は数えきれないほどで、あっちもこっちもいたるところにヒビ。
部分的にコンクリートがボロボロになって、欠損しているような箇所もあった。
部屋の隅で少し壁に体重をかけただけで崩れそうだった。
ところが、一か所だけ妙な部屋があった。
椅子がポツンとひとつだけ置いてある部屋。
和風の塗り壁でおしゃれに整えられていた。
「この部屋は何だ?」とYに聞くと、にこにこしているだけだった。
しかし、危険だ。
ここはいつ倒壊してもおかしくない。
「ここヤバイぞ、はやく立ち退け」
そうYに言っても、Yは笑いながら「もう仕方ないわ、ここしか住むところがない」と言う。
Yの弟のHもニコニコしていて、もう覚悟を決めていたようだ。
するとYが僕に言った。
「ここは危ないから、お前こそ早く逃げろ」
「うん、そうするわ」
僕はYの家をあとにすることにした。
Yの家から階段の踊り場に出た。
今にも崩れそうだ。
階段を降りている間に倒壊したら危険だ。
ここからどうやって脱出しよう。
そこで、いったん屋上に出ることにした。
屋上は数人の人たちが何かの作業をしていた。
家具屋の在庫管理をする人と、なにかの工事をしている人だった。
屋上にはワイヤーが張ってあった。
何の工事をしているのだろう?
この建物がそのまま倒れたら、ワイヤーにつかまっていれば助かるかもしれない。
いや、そんなことを考えているうちに建物から脱出したほうが良い。
そうなことを思って屋上から下の階への階段を探した。
階段を見つけて、それを降りていくと、家具の在庫が置いてあるフロアに出た。
教員住宅だと思っていたけど、家具屋の入っているテナントビルのようだった。
最上階は在庫、4階から下は店舗だ。
在庫のフロアには椅子が並べてあった。
おしゃれな椅子で、価格を見るとけっこう高い。
すると妙なアナウンスが聞こえてきた。
テレビの家具特集みたいな感じで女性アナウンサーがしゃべっている。
『おや、家具がありましたよ。これは椅子かな? 値段を見て見ましょう。結構ないいお値段ですね』
そんなことより、はやくここを出ないと危険だ。
僕は階段を降りた。