とある見慣れた街へ出たが遅い時間になり焦る僕。
ここらの街は治安が悪く、ガラの悪い奴も歩いている。
気を付けて帰らなければいけないと注意して駅まで歩く。
広島だろうか?
まもなく理系の大学に入る予定だ。
しかし、本当は理系じゃなくて文系の大学がいいと思っていた。
だから大学に行ったら理科系の授業ではなくて、文系の授業をたくさん受けようと考えた。
しかし、まだ大学受験まで時間があるから、しっかり勉強しないといけない。
駅に帰る途中で小さな本屋さんを見つけた。
大学受験の参考書はあるかと外から本屋を覗いたら赤本などがちらほら置いてあるようだ。
赤本は数冊で少なかったが、他にも参考書類はありそうなので中に入ってみることにした。
本屋はもう遅い時間なのに、数人の受験生たちがここで立ち読みをしていた。
彼らが立ち読みしている本棚には何があるのだろうと思って本棚を見るが、どうも受験の本ではなさそうだ。
ホビー関係の本を熱心に立ち読みする少年と少女たち。
僕には興味ない本だと思いながら立ち去る。
結局、めぼしい参考書は見つからなかった。
駅に着くまで時間はどんどん過ぎていく。
僕は黄色い帽子と学生服を着ていた。
どうして黄色い帽子をかぶってるんだろうと不思議に思った。
どうも黄色い帽子は僕のお気に入りのようだ。
夜の街にはちらほらと通行人がいた。
遠くの百貨店の入り口あたりを見ると芸能人のバービーが歩いていた。(前もいたな。苦笑)
バービーがこっちを見たのに気がついたから、芸能人と目が合って嬉しくなる。
しかし、もう既に大人なのに黄色い帽子を格好つけてかぶっていることに恥ずかしく思って帽子を脱いだ。
なぜなら黄色い帽子は小学生が頭に被るものだからだ。
もしかしたら僕は大人で受験生だと思っていたが、まだ小学生だったのかもしれない。
中学受験をしようと思っていたのだろうか。
そのうち大きな駅について、入り口から中に入った。
駅ビルがあり池袋や新宿の大きな駅のように見えるが、そこまで大きくない。
一つの駅ビル、駅庁舎にいろんなものがギュッと入っている感じ。
古い三越って感じ。
とはいえ、自分からしたらあまりに大きな駅なので、どこをどう行けば終電のホームに付くのかわからない。
もう間もなく終電なのに間に合わないかと思ったら気ばかり焦った。
周りをきょろきょろすると、駅員のような服装をしたオッサンがいた。
9番と番号が振られた階段の左わきの小さな店の前に立ち、大きな声で案内をしている。
「まもなく終電ですよ! 終電はこちらからどうぞ!」
どうやら9番の階段を登れば駅のホームに行けそうだ。
でも、他にも番号の付いた階段、色んな通路があって、本当に9番なのか不安だった。
そこで念には念を入れて、帰宅する方面に向かう電車はこの階段で良いか駅員に聞いた。
しかし駅員は恐ろしく不愛想で、僕の質問には一切答えなかった。
本当に駅員なのだろうかと少し怪訝そうにオッサンを見て9番階段を上った。
階段は上りかと思ったら下っており、僕は混乱した。
しかも、階段を進んだ先は駅の構内のはずなのに、ホームは一向に現れなかった。
大きなターミナルビルで迷ってしまったのだ。
あっちに行ってもこっちに行ってもホームは現れず、いつのまにかビルの屋上のような場所に出ていた。
屋上に出るといつの間にか夜から昼に変わっていた。
ふと黄色い帽子が無いことに気がついて頭を触ると何か変だった。
髪の毛が少し薄いのだ。
真ん中あたりが分け目に沿って薄くなっていることに気がつきぞっとする。
いつの間にか禿げちゃったんだと落胆する。
もしかしたら、小学生から急にオッサンになったのだろうか。
駅ビルの屋上をズンズンと歩いていくと、いつのまにか一軒家に紛れ込んでしまった。
古い昭和初期くらいの民家、恐らく農家の家のようだ。
中に入ると、そこは迷路のようになっていて、再び迷子になる。
民家の窓から外を見ると、のどかな農村の風景があった。
いつの間にか駅ビルの屋上の風景は消えて、農村のリアルな古民家に僕はいたのだ。
しかし、その雰囲気は悲しげで何かがこの古民家で起こったことがわかる。
どうもタイムスリップしてしまったようだ。
古民家の中をさまよっているうちに徐々にわかってくる。
ここには女の子とお母さんが住んでいた。
女の子がお母さんに問いかける。
「何が落ちてきたの?」
お母さんもわからない。
でも、女の子もお母さんもなにかの事件か事故に巻き込まれて死んだようなのだ。
悲しい雰囲気に見えるけど、子供はあどけなく悲しさに気がついておらず、母親は半ば死を覚悟したような様子でもあった。
とても嫌な予感がする。
ふと外を見ると何か大きな化け物のようなものが一瞬顔を出してビビる僕。
あの化け物は何だったのだろうと考えると、隕石、または爆弾が想起された。
もしかしたら、この家は爆弾で吹っ飛ばされたのだろうか。
すると確かに焼け焦げた人間のイメージが浮かんだ。
見たくないものを見たと目を覆う僕……。
そのうち、この古民家は資料館だと気がついた。
つまり、あの日の悲劇を二度と繰り返さないようにと古民家が復旧されたのだ。
もしかしたら僕はこの家に住んでいて、この女の子とお母さんとは家族だった?
僕は父親だったか、または男の子だったのだ。
僕は仕事または学校に行くため駅に向かったのだ。
駅に向かったことで助かったのか、または逆に、僕の方が駅にいたために爆弾の餌食になったのか。
どっちなのかはわからない。
何かが起こって、女の子とお母さんと会えなくなってしまったのは間違いない。
もしかしたら、古民家が資料館として残っているのだから爆弾でやられたのは駅だったのかもしれない。
つまり、僕の方が死んだのかもしれない。
さて、すべての事情はわかった。
でも僕は終電で帰らなければならないのだ。
この駅、そして資料館に来たのは初めてではなかった。
二度以上来ているのだが、しばらく来ていなかったので道が思い出せないのだ。
あぁ、もう間に合わない……。