豚を飼っていた。
非常に小さな豚である。
僕はそのブタを死ぬほどかわいがっていた。
でも、飼っているのだが、定期的に市場に送り込んでいた。
宮崎豚?
宮崎牛ならよく聞くし、スーパーでも売っているのだが、宮崎豚は聞いたことがない。
でも宮崎豚というブランドのブタなのだ。
そして、その宮崎豚は不思議な生き物で、胸・腹あたりから後ろ足の部分を包丁で輪切りにしてもまだ生きているのだ。
毎度、顔と前足だけを残して、切り離し、胴体と後ろ足部分を冷蔵庫で保存して後日出荷していた。
顔と前足だけ残してどうするのか?
なんと、徐々に腹から後ろ足が生えてくるのだ!
そしていつの間にか元通りになるという、不死身の宮崎豚。
不死身だからかずっと一緒にいる。
なので、毎年出荷するたびに気の毒になる。
毎度、体を切り離すことがかわいそうになってくる。
体を切り離すたびに、少しづつ弱ってきているようにも思えた。
そして僕はついに決意した。
これからはこの宮崎豚をペットとしてかわいがるだけにして、今回の出荷を最後にしようと。
意を決して小さなブタを手に取って、お腹のあたりで切り離す。
尻尾の部分は売れないから予め切り離しておく。
豚肉となった部分は冷蔵庫に入れて保存する。
これで最後だと自分に言い聞かす。
ところが、残った顔と前足部分は、なぜかいつもよりも非常に弱っていた。
あまり動かなくなってしまった。
どうしよう、これが最後だと思ったのだけど、最後にこんなに弱るなんて!
僕は焦って、どうしたらよいのかオロオロしていた。
冷蔵庫で冷やせば体力が復活するだろうか。
いや、だめだ…。
でも、なんとか生きているから大丈夫だろう。
早く足が生えて元気になってくれ、今度こそずっと一緒に楽しく暮らそう。
僕は涙を流していた。