別荘のような場所。
いや、オフィスのようにも見える。
大きなオフィスではなく、個人の、おしゃれな別荘のようなオフィス。
どうも、そこに呼ばれたようだ。
呼んだのは誰だかわからない。
姿は見えないが、なんとなくクライアントのO氏のようにも感じる。
すると突然、幾日か前のニュースを思い出した。
それは、パスワードが危険だということだ。
それは、設定したパスワードが危険なのではなく、パスワードを使うことが危険なのだ。
何かの事件が起こって、パスワードを使うこと自体が危険だと噂が広がったのかもしれない。
しかし世の中のシステムでパスワード機能がないシステムなど、ほとんど存在しない。
パスワードを使わないなら何を使うのだろうか。
するとO氏が笑いながら、どうしたらいいですか?と聞いてきた。
これはもうどうしようもないが、どうにかしなければならない。
システムはなぜか、小さな機械のような物体だった。
木でできているようにも見えた。
そこに付与された問い合わせ用の名刺を手に取った。
名刺にはなんと書いてあるか読み取れない。
O氏は笑いながら見守っている。
僕は手に取って名刺を一瞥し、そのまま機械に戻した。
名刺には折り目がついていた。