就職活動とアパート選びを同時にやっている。
東京の西のはずれのアパート。
家賃は4万500円だった。
ここのアパートの部屋を借りたいと思い、内見させてもらう。
アパートではあるのだが、大きめのマンションくらいの規模だった。
そのアパートにはオフィスも入っていてロビーもあり、働く人がたくさんいる。
フロアには壁が全くないオープンなオフィスで、あちこちに各社のデスクが置いてある。
要するに、色んな人が働いている様子が丸見えだった。
一通りアパートの中の様子を見て、この賑やかな雰囲気が気に入った。
部屋を借りたいと決意したので、大家をアパートに呼んで契約することを決める。
ところが、大家が、なかなかアパートにやってこない。
大家は高齢のジイさんだった。
あまりに遅いので、しびれを切らしてジイさんに電話するが、車で移動中だったようだ。
しかも、アパートの場所がわからないそうで、グルグルと迷っているらしい。
自分の所有するアパートなのに場所がわからないとは、あきれてものが言えない。
「もうすぐ着く」と言うのだが、いくら待てどもやってこない。
仕方なしに、ロビーにある椅子に座って待つ。
その椅子は一人掛けの椅子でリクライニングができるようになっており、ここで寝て待つことにした。
椅子の正面に置いてあるテーブルにはお皿いっぱいのリンゴが置いてあった。
皮が剥いてあり、自由に食べて良いらしい。
隣を見ると、リクルートスーツを着た女子も椅子で寝ていた。
周りを見ると他にも多くの人がジイさんを待っているようだ。
あまりに街過ぎて、皿のリンゴをすべて平らげてしまった。
隣の女子に「結局リンゴ全部食べちゃったよ」と言いつつ、二人で待ちくたびれて顔を見合わす。