季美の森のはずれ。
一度妻と訪れたことがある。
季美の森は住宅街だが、そのはずれは深い森だ。
綺麗な舗装道路一本だけが森を横切って別の街へと続く。
僕たちは森の中で動画を撮っている。
森を進むと中学生時代からの友達の家が綺麗にリフォームされて豪邸のように生まれ変わっていた。
その裏には僕たち夫婦が以前まで住んでいた家があった。
積水ハウスの家だ。
「車で4時間かかる友達の家が、実はすぐ裏にあったんだ。いつでも遊びに行けたんだ。気がつかなかった。」
僕は喜んだ。
それにしても豪華だ。
アメリカ西海岸でよく見るような大豪邸。
友達はうまくやったんだな。
家の一部は店舗と、そして賃貸にも出しているような造りだった。
僕も積水ハウスの家を建てる時に、一部を賃貸にすればよかったと後悔。
動画の取れ高は十分だが、まだ次の動画を取る必要がある。
森から町の方へ向かって妻と歩く。
僕たちは田舎の小さな自動車工場(個人経営のモータース)に入った。
そこの主人の軽トラに乗った爺さん。
爺さんを助けた僕らは歓迎された。
何をどう助けたのかはわからないが。
「なにか、お礼をしなけりゃいけないな」
そう言って爺さんはタヌコさんに機械油をドボドボと掛け始めた。
タヌコを見ると油まみれだ。
それを見て僕も機械油をタヌコにくまなくかけた。
でも、ふと思った。
こんな油を掛けたら「毒」じゃね!?
タヌコを洗わなきゃ!