都内らしき場所にいる。
環七? 環八?
葛飾区辺りだろうか、見覚えのある街並み。
ふと気が付くと、目の前に車が現れた。
スポーツカ―タイプの車だが、あちこち改造が施されている。
サラリーマン時代の同僚のYの車だ。
当時から改造していたが、より改造の度合いが進んでいた。
車をうしろから見ると、ボディが透明な素材でできていた。
その透明な素材から透けて見えるのは都内の地図、恐らくナビの画面だ。
さらに、その下には後続車への煽り文句が書かれていた。
相変わらずだ。
Yは自慢げに僕を車に乗せた。
しばらく走っていると見慣れた都内、下町の景色が見えてきた。
Yの自宅へ向かっているようだ。
すると、突然Yが後部座席へ移動した。
運転はどうなっているのだ!?
とても驚いたが、Yは得意げに後部座席でくつろいでいる。
どうやら自動運転の機能を自分で車に取り付けたらしい。
許可なく自動運転機能を付けてよいのか?
警察に捕まらないだろうか?
不安に思っていると、二つのYにそっくりな顔をした人形を運転席に配置した。
でもサイズが小さい。
最初はYの子供かと思ったが、よく見ると人形だった。
独身貴族のYもついに結婚したかと思ったが違ったようだ。
しかし、これじゃまるで子供が運転しているようにみえる。
やっぱり警察に見つかったら怒られそうだ。
交差点の赤信号で車は自動的に止まった。
すると、Yは車から降りたではないか!?
僕は驚いて一緒に車から降りた。
Yはスマホの地図を見ながら車を追跡した。
大丈夫なのかと聞くが、Yは得意げな顔で黙っていた。
車は自動的に自宅まで行くらしいのだ。
本当に大丈夫だろうか。
ここまで精度の高い自動運転機能をどうやって取り付けたのだろうか?
しかも自分で。
Yと僕はスマホを見ながら、ゆっくりと歩いて車の後を追う。
もしかしたら、逆再生したシーンを見せられているのではないだろうか?
つまり、このシーンは最初から幻想だ。
そうだ、きっとそうにちがいない……。
ふと、そんなことを思いついたが、恐らく当たっていると確信した。